量販店をチェーン展開をしている上場企業からの調査依頼である。

在籍7年目の従業員Aが、商品の横流しやメーカーからのリベートを着服していた事が内部告発により判明。メーカーからの言質も取っていた為、Aも自分の罪を認めた。会社側は表沙汰にする事を嫌い、警察へは訴えず、Aを解雇処分とした。ただ、金額が多額であった為、民事で訴訟を起こし、Aに約1,500万円の支払い命令が下される。多額である為、双方で支払い計画書を作成し、会社側は実行を待つのみとなった。
しかし、一度目から支払いが行われず、Aの連絡先の電話も不通となった。ただ、会社側も多忙であり暫くそのまま放置。決算時に、未収の1,500万円が問題となる。元々、借金まみれであったAであるが、家族も居た為、働きに出ていれば給与差し押さえも可能である。

という事で、Aが何処に勤めているかの実態調査の依頼を受けた。
休日出勤のみ、あるいは夜勤やシフト制の会社に勤務している事も鑑み、土日を挟む5日間、朝7時から夜7時までの調査とした。

アパートポストには公共料金や電話代金の請求書を含め、A宛ての郵便物がたくさんあり、居住している事は確からしい。窓際には婦人物らしい洋服がたくさんかかっており、玄関にはベビーカーも。家族で暮らしている様だ。
ただ、電気メーターの動きはあまりない。留守なのか? 夕刻、他の部屋の電気が点灯されるが、Aの部屋は暗いままだ。やはり留守かもしれない。帰宅を期待し夜8時まで待機するもA宅に灯りが灯る事はなかった。翌日も同様。もしや、夜中に出入りをしているのだろうか。調査終了時に、A宅玄関扉に出入りすればわかる様に落ち葉を挟んでおく。翌朝、落ち葉は挟まったままである。

結局、調査期間5日の間にAおよび家族が当住所付近に現れる事はなく、不在の様子であった。ただ、転出したにしては、たくさんの衣服等が室内にかかったまま、着の身着のままで家族そろって出て行ったのだろうか。また、A宅ポストには「重要」「至急回答要」と朱書きされた督促状らしき郵便物が垣間見られ、未だ金銭面では苦しい様子がポストからも窺い知れた。ポスト外より郵便物を撮影。

この報告により、再度、内容証明で督促状を送付し音沙汰が無かった為、償却処理をする事に決定したそうだ。後ろ向きの処理のための調査はあまり喜ばしくはないが、企業存続中には、こういった事もあるのだろう・・・