人事採用調査をしていて、経歴や役職の詐称、退職理由の虚偽申告、トラブル隠し等は珍しくもない。
だが、苗字詐称は滅多にいない。

調査対象のA氏。
前職の調査をした際に、前3社共に、在籍事実なしとの回答となる。
ただ、その中の1社が、男性であるが婿養子等の可能性もあるのでと「名」と「生年月日」で検索をしてくれた。
そこで、別の苗字で働いていた事が判明した。
他2社も、再度確認したところ、別の苗字での在籍が確認できた。
ただ、A氏の場合は、結婚も離婚もしておらず、苗字を変えた理由が判然としない。
職場でも、特にトラブルを起こした人物ではない。
何か深い事情があるのだろうか・・・

調査の結果、前住所のアパートで半年分の家賃を滞納したまま夜逃げをしていた事が判明。
現住所は、身分証明の要らない短期間入居可能の格安賃貸アパートである。
しかし、苗字を変えるって大変な事ではないのか・・・

最終面接時に、会社側がA氏に免許証の提示を求めたところ、拒否。
よくよく話を聞いたところ、勝手に名乗る名前を変えれば、成りすましせると思い、前住所家主から追われない為に、母方の旧姓を名乗って履歴書を書いたと言う。
健康保険やその他をどうするつもりだったのかと聞いても「新しく名乗った名前で作ってもらえると思った」と何とも暢気な返事だったそうだ。

A氏は40歳を過ぎた人物。
マイナンバー制で皆が一括管理されるというこの時代に、何とも浅い考えを持つ人だった様だ。

「取り敢えず、採用前に家賃滞納や、苗字詐称がわかり良かったです」
と苦笑いを交えたクライアント担当者談が得られた。